ネット通販の“便利さ”を支える「返品・返金の手軽さ」。 でも、その仕組みが生成AIに狙われはじめています。 中国のECを中心に、AIで不良品っぽい証拠写真を作って返金を通すタイプの詐欺が問題になっている、という話です。
結論:狙われているのは「写真提出だけで返金が進む」ルール
一部のECでは、返金の際に商品を返送せず、 「届いた品が不良だった」ことを示す写真(または動画)の提出だけで返金処理が進むケースがあります。 そこに付け込んで、AIで“壊れて見える画像”を捏造し、正常な商品でも返金を取る手口が増えている、という内容です。

何が起きてる?:AIで「不良品の証拠」を作って返金申請
手口はシンプルで、ざっくりこう。
- 商品を購入(届いた商品は正常)
- 生成AIや画像加工で「傷・破損・カビ・汚れ」っぽい写真を作る
- その画像を“証拠”として提出して返金を申請
- 審査が通ると商品は手元に残ったまま返金されることも
例としては、こんな“それっぽい不良”が作られやすいと言われます。
- 果物:カビ、腐り、変色
- 陶器・ガラス:ヒビ、欠け
- 衣類:破れ、ほつれ、シミ
- 精密機器:傷、割れ、汚れ

なぜ通るのか:審査の“効率化”が弱点に
返品・返金をスムーズにするため、プラットフォーム側が 「証拠画像がそれらしく見えるか」を中心に判定し、自動処理寄りになっている場合があります。 その結果、巧妙なAI画像や加工画像だと見抜きづらい。 これは“審査を速くして顧客満足度を上げたい”設計が、そのまま穴になるパターンです。
出品者が苦しい:小さな返金でも積み上がる
このタイプの問題で厄介なのは、1件あたりの被害が小さく見えても、 回数が増えると出品者側のダメージが大きくなること。
- 返金額が小さいほど「争うコスト」が見合いにくい
- AI生成かどうかの断定が難しい
- 返品不要の運用だと“商品もお金も”失いやすい
特に生鮮食品などは「返品しても再販売できない」ため、 返送コストを考えて返金のみで処理する運用が起きやすく、狙われやすい側面があります。
背景:返品がしやすい文化・制度がある
中国では「一定期間の無理由返品」が広く知られており、 返品の心理的ハードルが低い環境があると言われています。 もちろん対象外や条件もありますが、“返品・返金が簡単”という便利さが 逆に悪用されやすい土壌になることがあります。
対策は?:AIラベルや審査強化が進むが、いたちごっこ
AI生成コンテンツの拡大を受けて、AI生成物の識別(ラベル・透かし・メタデータ等)や、 返金審査の強化といった対策が話題になります。 ただ、生成AIの進化は速く、「証拠の信頼性」をどう担保するかは今後も大きなテーマです。
ポイント: 「商品を偽造する」のではなく、“トラブル証拠を偽造する”方向にシフトしているのが怖いところ。 画像が武器になる時代だからこそ、画像の真偽チェックが重要になっていきます。
日本はどう違う?:返品は「店のルール」+例外もある
日本では中国のような“無条件返品”が標準ルールとして浸透しているわけではなく、 基本的には各ショップの返品規約に従います(通販でも同様)。 ただし、状況によって返品ルールが変わるケースもあるため、 実際の購入時は販売ページの返品条件を確認するのが安全です。
まとめ:AI時代の通販は「証拠が作れる」前提で設計が変わる
便利な返金制度は、ユーザー体験を良くする一方で、 “証拠画像が簡単に作れる時代”には悪用リスクも跳ね上がります。 これからは、プラットフォームも出品者も購入者も、 「画像=真実」ではない前提でルールが再設計されていくのかもしれません。
参考: カラパイア(元記事)


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