「宇宙の話って、もうだいたい解明されてきたんでしょ?」と思っていたら逆。最近の観測技術の進化で、むしろ“話が合わないデータ”が増えまくり、これまで信じられてきた宇宙像に大きな亀裂が入っている――という内容を、科学系YouTubeのKurzgesagtが解説しています
まず結論:危機=終わり、じゃなく「次の革命が来るサイン」
Kurzgesagtの主張はシンプルで、科学はずっと順調に進むのではなく、ある時期に“合わない結果”が積み上がって混乱し、その後理論がアップデートされて革命が起きる、という周期があるというもの。今回の宇宙論は、その「混乱フェーズ」に見える、という話です。
そもそも「宇宙論」って何?
超ざっくり言うと、「宇宙がどう始まり、何でできていて、どう振る舞うか」を説明する“標準の説明書”のこと。長年、観測と驚くほど一致してきたので「かなり当たってる」と思われていました。ところが最近、望遠鏡の性能が上がってデータが鮮明になるほど、理論と観測のズレが目立ってきた……という流れです。

亀裂①:宇宙が「均一」じゃないかもしれない(巨大すぎる構造物たち)
宇宙は、ズームアウトすればするほど“だいたい均一”になる――という考え方は、宇宙全体を理解するための重要な前提です。
ところが、観測では「デカすぎて説明が難しい」構造が次々に報告されています。記事では例として、ジャイアント・アーク、巨大クエーサー群(Huge-LQG)、ジャイアントGRBリング、ヘルクレス座・かんむり座グレートウォール(長さ100億光年級)などが挙げられています。さらに、銀河が少なすぎる“宇宙の砂漠”としてローカルホール(天の川銀河も含む)も登場します。
もし私たちのいる場所が「偏った場所」だったら、そこで見える宇宙像を“全体の代表サンプル”として扱えなくなる――これは宇宙観そのものに効いてくる、というわけです。

亀裂②:宇宙の膨張スピードが「2つ」ある(いわゆる“ハッブル張力”)
宇宙は膨張している。ここは多くの方法で確かめられています。問題は「どれくらいの速さで膨張しているか」を測ると、方法によって答えがズレること。記事では「スピードメーターとGPSで車の速度を測ったら違う」みたいな例えで説明され、しかも測定が正確になるほど差が悪化、偶然の可能性は100万分の1未満だとされています。
要するに、「測定が壊れてる」のか「理解が壊れてる」のか、どっちかは見直しが必要になってきた……というニュアンスです。

亀裂③:宇宙が若すぎるのに、銀河が育ちすぎ(“幼い宇宙に古い銀河”問題)
遠くを見るほど過去を見る(光が届くのに時間がかかるから)――望遠鏡は“宇宙のタイムマシン”みたいなもの。
そこでジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)が見てしまったのが、「その時代にそんな大きく明るくなれる?」級の銀河。記事では例として、2025年に発見されたとされるMoM-z14が紹介され、ビッグバンから約2億8000万年後にできた可能性がある一方、従来のイメージでは最初の銀河は約5億年後くらいと見積もられていた、と説明しています。
さらに、超初期の銀河なのに重元素が多い(=その前に星が生まれて元素を作って爆発していたはず)という示唆も出てきて、成長速度の説明が難しくなります。
極めつけに、宇宙論の大黒柱とされてきた宇宙マイクロ波背景放射(CMB)ですら、「初期銀河が明るすぎてCMBを汚染しているかもしれない」という説が出て議論になっている、と述べられています。

じゃあ結局、宇宙論は“間違い”なの?
過去の例として
- 天王星の軌道のズレ → 未知の惑星(海王星)の発見で解決
- 水星の軌道のズレ → 惑星は見つからず、重力そのものを見直して一般相対性理論へ
という流れが挙げられ、「ズレが出ること自体は科学の失敗じゃなく、次の理解への入口」と説明しています。
まとめ:いま宇宙は“面白くなる直前”かもしれない
短く言うと、観測技術が強くなりすぎた結果、宇宙が「はい、今の説明書だとここ説明できません」と言ってきている状態。だからこそ、研究者は
- そのうち解消される(測り方の問題)
- 既存理論を洗練すれば説明できる
- まったく新しいアイデアが必要
と議論していて、どこへ落ち着くかはまだ不明――でも、ここから宇宙はもっと面白くなる、という締め方でした。


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