「AI使うと仕事ラクになる」──それは事実。でも、もしその代償が“考える脳の稼働率が落ちる”ことだとしたら? Xで拡散したのが、「MITの初の脳スキャン研究で、ChatGPTユーザーは神経活動が47%低下」という刺激強めの話。 さらに「83.3%が数分前に書いた文章を1文も思い出せなかった」という追撃まで付いて、タイムラインがザワついた。
何が拡散した?(投稿の要旨)
- MIT(マサチューセッツ工科大学)の“初の脳スキャン研究”でショッキングな結果
- ChatGPT使用群は神経活動/脳の結合(コネクティビティ)が大きく低下(“47%低下”として拡散)
- 83.3%が、数分前に自分が書いた文章を1文も引用できなかったという主張がセットで拡散
この手の数字は、強い。強すぎて、文脈を置き去りにして独り歩きしがち。 なので次で「研究の中身」を冷静に見る。

研究の中身:ざっくり何をどう測った?
話題の元ネタは、MITの研究グループによるプレプリント(査読前)“Your Brain on ChatGPT”。 参加者を3グループに分け、エッセイ課題をこなしながらEEG(脳波)で脳活動(特に脳内ネットワークのつながり)を測った。
- LLM群:ChatGPTなどを使って書く
- 検索群:検索エンジンで調べながら書く
- 脳だけ群:ツールなしで書く
その結果、研究概要としては「ツールに頼るほど脳内ネットワークの広がりが弱くなる傾向」「LLM群は最も弱い結合」 「自己の文章としての“所有感”が低い」「自分の文章を正確に引用するのが苦手」などが述べられている。
ここが誤解ポイント:「47%低下」は“何の47%”なの?
「47%」がバズると、つい“IQが47%下がった”みたいな受け取り方が発生する。 でも実際は、研究で見ているのは主にEEG上の“脳の結合(connectivity)や関与度”の話で、 「脳が壊れる」みたいな話ではない。
とはいえ、“依存するほど脳がサボりやすい/記憶に残りにくい”という懸念自体は、研究が問題提起している部分でもある。
注意:これは“査読前”で、メディアも賛否あり
この研究はプレプリント(査読前)で、サンプル数や実験条件などの限界も指摘されている。 その一方で、大手メディアでも取り上げられ議論が広がっているのも事実。 「AIを使うな」ではなく、「使い方次第で学びが“外部記憶化”する」という問いを投げている、と見るのが現実的。
じゃあどうする?“脳を殺さない”ChatGPTの使い方(実践)
- 先に自分で下書き(骨子):結論→理由→具体例まで5行で作ってからAIに投げる
- AIは「答え」じゃなく「壁打ち」:反論・抜け漏れ・構成案だけ出してもらう
- 最後に“自力で要約”:AIの文章を見ずに、1分で要点3つを書けたら勝ち
- コピペ禁止ルール:使うなら“言い換えて再構成”が最低条件(記憶に残りやすい)
- 学習用途は「ヒントだけ」模式:答えを出させず、問いの分解・例題・採点基準を出させる
要は、AIに“思考のハンドル”を渡すほど、自分の脳は運転席から降りがち。 逆に、自分で運転して、AIはナビにすると強い。
まとめ:便利さの代償は「思い出せなさ」かもしれない
「47%」や「83.3%」は、煽りとして強烈だけど、研究が示しているのは もっとシンプルな話かもしれない――“ラクをすると、記憶と所有感が薄くなる”。
仕事でAIを使うのは全然アリ。ただ、学びやスキル形成まで丸投げすると、 「その場では速いけど、後で何も残らない」状態になりやすい。そこだけは意識しておきたい。
参考(出典)
- 樺沢紫苑氏の投稿(X)に含まれる主張(47%・83.3%)の拡散内容 X (formerly Twitter)
- 研究プレプリント(arXiv)要旨:実験設計(3群・EEG測定等)と主要結論 arXiv
- Nature(ニュース):研究が査読前である点と論文参照 Nature
- TIME:ChatGPT使用群が最も低い脳の関与度だった旨(報道ベース) TIME


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